2025/04/10
前編では、犬や猫に見られるリンパ腫の基礎知識や、よくある症状についてご紹介しました。リンパ腫は首や脇の下のしこり、元気や食欲の低下、体重減少などが見られたら注意が必要です。
今回は、リンパ腫が疑われたときに動物病院での診断の流れや、治療の選択肢について詳しく解説します。早期に発見して適切な治療を行うことが、愛犬や愛猫の健康を守るための第一歩になります。
【前編】犬や猫の首や脇にしこりがある?|リンパ腫の基礎と症状チェック
■目次
1.動物病院での診断の流れ
2.主な検査の説明
3.診断後のステップ
4.治療の選択肢
5.治療中の犬や猫のお世話
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ
動物病院での診断の流れ
リンパ腫が疑われる場合、動物病院では以下のようなステップで診断を進めます。
①触診
まずはしこりの大きさや硬さを確認し、リンパ節の腫れがないかを調べます。
②血液検査
白血球やリンパ球の数値を確認し、体内の異常をチェックします。
③細胞診や生検
必要に応じて、しこりから細胞を取り出す「細胞診」や、組織の一部を採取する「生検」といった検査を行い、がん細胞の有無を確認します。
④画像検査(レントゲン・超音波)
リンパ腫が内臓や他の部位に広がっていないかを調べます。
これらの検査を組み合わせることで、総合的にリンパ腫の診断を行います。
主な検査の説明
<リンパ節の検査(細胞診・生検)>
しこりの正体がリンパ腫かどうかを調べるため、まずは細い針を使ってリンパ節から細胞を採取する「細胞診」を行います。より詳しい情報が必要な場合には、リンパ節の組織を小さく切り取って調べる「生検」が行われます。どちらも顕微鏡でがん細胞の有無や種類を確認します。
<画像検査(レントゲン・超音波)>
リンパ腫は体の表面だけでなく、胸やおなかの中にあるリンパ節にできることもあります。そのため、レントゲンや超音波を使って、内臓や肺などへの広がりを確認します。目に見えない部分の病変を把握するためにとても重要な検査です。
診断後のステップ
診断でリンパ腫と確定したら、病気の進行度、いわゆる「ステージ」を判断します。これは、リンパ腫がどれだけ広がっているかを把握するもので、治療方針を決める際の大切な指標になります。
ステージの判断には、リンパ節の腫れの範囲や内臓、骨髄に異常がないかなどを検査して総合的に判断します。一般的には、ステージが低いほど治療の選択肢が多く、回復の可能性も高まります。
治療の選択肢
犬や猫のリンパ腫には、いくつかの治療法があります。犬や猫の年齢や体調、生活環境に合わせて、最適な治療法を選ぶことが大切です。
<化学療法(抗がん剤治療)>
リンパ腫の治療で最も一般的なのが化学療法(抗がん剤治療)です。犬や猫の抗がん剤は、人と比べて副作用が少なく、多くの子が普段と変わらない生活を送りながら治療を受けることができます。
<ステロイド療法>
ステロイド薬を使ってリンパ腫の進行を抑える方法です。化学療法よりも副作用が少なく、体力が落ちている子や高齢の子にも選ばれることがあります。
<放射線治療>
特定の部位にできたリンパ腫に対して行われる治療法です。しこりが限られた部位にある場合や、他の治療と組み合わせる場合に選択されます。
<緩和ケア>
病気の進行を止めるのが難しい場合は、痛みを和らげるための治療(緩和ケア)を行います。犬や猫の痛みや不快感を和らげることで、少しでも快適に過ごせるようにサポートすることが目的です。
近年、獣医療は進歩しており、さまざまな治療の選択肢が増えています。どの方法が最適かは、愛犬や愛猫の状態や生活の質を考えながら、獣医師と相談して決めることが大切です。
治療中の犬や猫のお世話
治療を続けていくうえで、飼い主様のサポートがとても重要です。できるだけ犬や猫が安心して過ごせるように、以下のような工夫をしてあげましょう。
・栄養バランスの良い食事を与える(獣医師と相談して適切なフードを選ぶ)
・静かで落ち着ける場所を用意する(ストレスを減らし、安らげる環境を整える)
・いつもと違う様子がないか観察する(食欲や元気の変化に気づいたら、すぐに獣医師に相談する)
・無理をさせず、犬や猫のペースに合わせる(疲れやすくなることがあるため、負担をかけないようにする)
よくある質問(Q&A)
Q:治療中も普通に生活できますか?
A:多くの犬や猫は治療中も普段と変わらない生活を送ることができます。特に化学療法は副作用が少なく、犬や猫の負担が軽い治療法として選ばれることが多いです。ただし、病気の進行によっても体調が変化しやすいため、いつもと違う様子があればすぐに獣医師に相談しましょう。
まとめ
リンパ腫は犬や猫によく見られる病気ですが、早期発見と適切な治療を行えば、元気に過ごせる可能性を高めることができます。しこりや体調の変化に気づいたときには、自己判断せず、できるだけ早く動物病院で診察を受けてください。
大切なのは、飼い主様が異変を見逃さず、獣医師と協力して最善のケアを選ぶことです。早期発見と丁寧な対応が命を守る力になります。
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